帝王紫探訪 吉岡常雄 著 帝王紫は古代地中海の海洋国家フェニキアで誕生した。ギリシャローマ帝国へ受け継がれていった。1968年(昭和43年)その遺跡を訪ねる旅へと著者は、ナポリ、クレタ島など貝を採集して紫の染色を試みたあと(著書内で貝の色素などを学術的視点から明らかにしている。)、古代フェニキアの都市シドンの近くでようやく帝王紫(ロイヤルパープル)に使われた貝殻の貝塚を発見する。地中海では15世紀にすでに滅び去った貝紫の染色が今もメキシコのオアハカ州で伝えられていることを知り、幾多の困難を押してようやく山深い村にたどりついたのは、今から15年前(著者の視点著書の視点でのこと)1969年(昭和44年)のことであったという。その5度にわたって訪れ、村長で雑貨店を経営しているリアンドロヴィリエルロムス氏には協力や案内、説明でお世話になったという。フェニキアで紀元前16世紀頃から始められた貝による紫の染色はギリシャローマ時代へと受け継がれ、まさに高貴な人々だけに着用を許される帝王紫となった。古代シルクロードの交易都市として知られるシリアのパルミュラやエジプトのナイル川付近で発掘されたコプト裂の中に帝王紫の裂があることでもわかる。そうした帝王紫の探訪を17年間続けた。また著書の終盤、昭和小説『貝紫幻想』の著者芝木好子さんと帝王紫を語る対談が収録されている。今思えば、吉岡常雄氏は染色考古学であとにもうでることのない偉大な人物だったのである。 北村陵 北村織物