日本の染織 縮と上布 心で織る素朴な布 江戸末期、越後塩沢に住んでいた鈴木牧之は、著書『北越雪譜』にこう書いている。「雪中に糸となし、雪中に織り、雪水に洒ぎ、雪上にさらす。雪ありて縮あり。されば越後縮は雪と人と気力相半して名産の名あり。魚沼郡の雪は縮の親というふべし」 越後の山間部は寒冷地で、しかも肥沃な土地という苧麻の生産に適していたこともある。しかし、それにもまして冬季は豪雪に見まわれ、隣家との従来も不可能になるというふうであったことが、逆に上布を栄えさせたのである。つまり、家の中が暗くなるほど降り積もった雪の中で機織りに集中できたわけだ。お互いに技をも競い合ったことだろう。麻は湿度に敏感な繊維だから、冬場のほうが仕事がしやすい。まして、雪晒しによって麻の漂白もできる。自然まかせの時代にあって、麻を織るのは冬に限るのであった。こうして糸質の良し悪し、出来上がりによって、下布、中布、上布という区別もうまれた。上布とは文字通り、上等の麻織物を意味していたのである。