日本人の愛した色 吉岡幸雄 著者、吉岡幸雄氏がまだ若い頃の原稿である。源氏物語から古典としての教養だけを吸収していくのとは違い、本当に源氏物語が彼の支えであると思う。シルクロードブーム到来によって染織の世界が見直された時期がかつて日本にはあった。それは丁度、日本が戦後処理をはじめてから高度経済成長をとげて、大量生産、大量消費の世界はむなしきことこのうえなし、といった民藝活動が東京の至るところにその志がかかげられて手仕事の尊さに目が向けられる。シルクロードの歴史から絹産業が発達していき、東の終着地、日本までのはるかなる道の長さ、染めによってできあがる天然の染料の風合い、日本は忙しさのあまりに見逃していたものをシルクロードの歴史から再びくみとる動きがあった。こうした世間的なものも見方にしている染織の世界は当然、活気が戻ることであり、再びのふたたび、染織またはシルクロードブームがおこるのかときかれれば、これは私が生きている間の時間くらいではおきそうもないが、染織の世界はブームがおきようがおきまいがあくまで自然のいとなみの中で繰り返されている仕事でありさして影響はない。染織の世界は、専門知識がいると思われている。専門知識は、厳密な手仕事をするときに必要な知識であってはじめて有効的な知識、かつ技術となる。そのために専門知識をつぎからつぎへと吸収しては、技術へと還元していき、他者へ伝承か刺激になり、それらがどんどん好循環していくのが染織ブームである。生産者がよりよい環境にいるためにはブームの追い風は、ちからになるが、すぐに簡単に、といった具合では技術者というのは実力もつかなければ、考えもしなくなる。これでは自然淘汰をまつだけのものになってしまうのであるから、そうならないように努力する。一概にブーム歓迎、というものではない。吉岡幸雄さんの著書をぜんぜん説明しないで終わってしまった。 北村陵