(結城紬の)技術を守る人
| 技術を守る人 |
| 1糸つむぎ
技術保持会の糸つむぎ部門は、62名の会員であるが、これは年齢や地理的条件等も加味して、選ばれた一握りの人達であり、結城紬の原料のにない手は、数万数千といわれている。(訂正 数百くらいといわれている。)あまりにも大勢のため実態が把握しにくいが、生産反数から逆算するとうなずける数である。 結城紬の原料を取扱う業者は28名で、これらの業者は、真綿を結城の取引き単位である94g毎に束ね、糸をつむぐ人達に配って歩く、約束の日に回収にいき、手間賃と新しい真綿をおいて、次の回収日を約束してくる。こうして回収した糸を店頭に並べ、機屋の要望に応じて、繊度を揃えて供給するのが原料商の仕事である。 つむぎ糸は、一日4〜5時間働ける条件の人達が、納期にかかわりなくできる内職として、支えられているものであるが、結城人といわれる人達は、それが内職であっても、物産を支える使命観を持ち、約束の日にちには仕上げてくれるという。工場等の進出で新たにこの地方に定住した人達には、このような気構えは、まったく見られず、非常に商売がやりにくいと、度々きかされる話である。ここにも結城紬の一面をみることができる。 2絣くくり 結城紬で、男子が仕事に参加するようになったのはまだ日が浅い。紬に絣がとりいれられるようなってからである。絣を作るには、糸の選定眼を養わなければならない。できるだけ繊度班の少ないものを選び、しかも見かけの太さに惑わされないことである。最近は繊度計を利用するようになったが、利用だけで解決する問題ではない。 結城紬に代表される模様の基本には、亀甲と蚊絣がある。この亀甲や蚊絣が集まって、一つの柄が構成される。この基本になる亀甲や蚊絣が、織物の巾36cmの間に、一列に配列されたとき、何個並べることができる大きさであるかによって80の細工とか160の細工絣とか呼ぶ。この細かい墨付け、絣くくりの仕事が男たちの仕事なのである。 いま一つの結び目を一ホシとすると、百七個(現在は110個以上120未満)の亀甲絣をつくるためには、経、緯で約七万八千ホシを括ることになる。毎日この作業を続けるためには、一日二千五百ホシが限度であるという。(まれに一日四千以上括りをするものもいる。)二百の亀甲絣になると、ホシは数は二倍になるのに、能率は千五百ホシに低下するそうである。一日五千ホシの記録保持者もいるようであるが、これは一日だけのものであって翌日は精根尽き果てて仕事にならないとのことである。 くる日もくる日も、単純な絣くくりの繰り返しであるが、ここに織り上がりの良否を決定する技術が秘められている。如何にして織る人に負担を掛けないで、良い絣を作ることができるか、他人に負けられない職人気質、結城男のこの気質を象徴するものに、結城紬の作品コンクールがある。(平成現在も存続中、賛否両論で存続中止の声もあった。)年に一回、十一月の土、日を利用して盛大に行なわれる。(現在は作品出品数減少傾向、30点くらいしかないようだ。) これは、純粋な技術コンクールで商売抜きである。(現在は商売っけが出て地元問屋が裏で牛耳っている。)従って審査員もそれぞれの技術の専門家が当たり、(現在は素人。)、手つむぎ、絣くくり、染色、製織りの四者の汗の結晶を、各角度から審査を行なう。最高位には県知事賞(現在も同じ)が授与されるが、男達はこの日のために、火花を散らす研鑽が続けられる。織物を計画して、製品になるためには長い期間を要し、これが必ずしも、コンクール用作品に値するかどうかは保証されていない。従って作品によっては、出品のために半年或はそれ以上も、温存することになる。 この間に値段の変動でもあると、大変な損害を蒙る危険があるが、彼等はじっとこれに耐えるのである。企業の中での五十万や百万の金額であれば、支障も来さないであろうが、副業として細々と製織りする中で、出品のために長期間、反物を寝かせることは、非常な努力が必要なのである。彼等には技を磨く職人というより、芸術家的真情が満ちあふれている。 |
| 以上である。 |
| 2012.1.16. 再編集 北村陵 |